

20世紀に起きた最大の悲劇のひとつが、映画史に輝く『タイタニック』を生み出した。そして今、21世紀最初の悲劇が永遠に語り継ぐべき映画となって誕生する。『ワールド・トレード・センター』は文字通り2001年9月11日に最も甚大な被害を出した場所そのものを舞台にした作品である。しかしそこに描かれているのは政治的な背景や歴史的な評価ではなく、TVの画面やその後の報道などでは決して知りえなかった血の通った真実の人間ドラマ。避難する人々を救助するため、命を顧みず世界貿易センタービルに入り、倒壊した瓦礫に封じ込められた実在の港湾局警察官の勇気と、彼らの生還を待ち続ける家族——憎むべき悪を引き起こしたのも人間であったが、その出来事の中で必死になって生きようとし、同時にひとりでも多くの人々を救出しようとしたのもまた、同じ人間であった。もちろん「9.11」に直面した人々のドラマはこれひとつだけではない。そして彼らの英雄的な行動をスクリーンに刻むことだけでは、あの日の全ての被害者たちの魂が救われることにはならない。しかし我々に「希望」をもたらしてくれた男たちの姿を描くことは、「信じること」「助け合うこと」という、人間が本来持っているべき尊い感情を喚起させるに違いない。極限状態で生まれた真実だけが伝えられる、心を揺さぶるような感動——信じられないほどの「悲劇」と対峙するために私たちが出来ることは、事実をありのままに見つめながら、その中から<真の意味で素晴らしい人間の姿>を探し出すことに他ならない。それこそが、全世界を震撼させた事件が私たちに問いかけていることなのである。

2001年9月11日、午前8時40分過ぎ、あるはずのない旅客機の機影がマンハッタン上空を横切った。やがて起こる巨大な地響き——ニューヨークのシンボルともいえる2つのタワー、世界貿易センター北棟にアメリカン11便が、そしてユナイテッド175便が南棟に激突した。港湾局警察官(PAPD)のジョン・マクローリンとウィル・ヒメノは同僚とともに現場に急行。「全てのことに備えてきたつもりだが、これほどの事態とは…」。誰もがあまりの惨状に呆然と立ち尽くすしかなかった。しかし手をこまねいていることは出来ない。リーダーのマクローリンはヒメノを含めた3名の部下と共に、ビルの内部へ遭難者の救出に向かう。その時、再び起こる轟音——ビル全体が崩壊を始めたのだ。奇跡的に生き残った2人だったが、瓦礫の下敷きになって身動きすら取れなくなってしまう。互いの姿は見えなかったが、彼らには一筋の光が見えていた。それは必ず生きて帰れるという希望の証。そして闘っているのは彼らだけではなかった。無事を祈る家族、二次災害を恐れずに瓦礫の下に埋もれた彼らを救い出そうとする海兵隊員、消防士、警官たちにとっても、永遠のように長い時間が過ぎていくのだった…。

監督はこれまで3度のアカデミー賞®に輝く巨匠オリバー・ストーン。“信じるもののために全力を尽くす”人々を描き続けてきた監督にとって、この超大作が集大成になることは間違いない。初めて脚本に目を通したとき、その“シンプルでエモーショナルな内容”に打ちのめされたと語り、「あの恐ろしい出来事を、私の今までのアプローチとは違う」2人の男のパーソナルな面から「9.11」を描くことを決意したと監督は語る。その根底にあるのが、作品のキーワードにもなっている“勇気”と“生還”、そして人は“支え合って生きている”という現代人が忘れてしまったことであることは言うまでもない。 港湾局警察のベテラン巡査部長ジョン・マクローリンを演じるのは、『リービング・ラスベガス』でアカデミー賞®を受賞し、『アダプテーション』でも同賞にノミネートされている名優ニコラス・ケイジ。「俳優としての能力を何か意味のある、人々の役に立つものにしたい」と考えていた彼は、経験を積んだ静かで重厚な演技力で、部下を率いるリーダーシップ、絶望と哀しみに襲われた人物の中に前向きに生きる力を吹き込んでいる。その志と存在感は、まさにマクローリン本人とも重なっているかのようだ。もうひとりの主人公である港湾局警察官ウィル・ヒメノ役には、『クラッシュ』、『ミリオンダラー・ベイビー』等の話題作に出演しているマイケル・ペーニャが扮している。ヒメノ本人がどんな状況でもユーモアを忘れない人物であるのと同様、ペーニャのキャラクターとその演技がストーリーに生き生きとした活力を与えている。「瓦礫に囲まれている状態では、俳優としてできる選択肢は多くありません。ウィルの家族への思い、ジョンとのつながりを見せようと、僕は台詞によって絵を描こうとしました。僕の体は、そこから出たいと叫んでいました。ウィルが実際に経験した痛みとは比較になりませんが、その感覚を体感しました」とペーニャは語る。 物語は2人の主人公を中心に展開していくが、崩壊したビルの下敷きとなっている夫の安否を気遣う妻たちがもう一方の主人公になっている。マクローリン夫人のドナを『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の強烈な演技で批評家の絶賛を浴びたマリア・ベロ、ヒメノ夫人のアリソンを『モナリザ・スマイル』のマギー・ギレンホールがそれぞれ演じ、勇敢な男たちの家族を支える女性らしい優しさと忍耐力を見事に表現してみせる。また、グランド・ゼロで救出にあたった50人以上の実際の警察官、消防士たちも、エキストラとして出演している。

本作品の映画化は、プロデューサーのデブラ・ヒルがジョンとウィルの2人についての新聞記事を読んだことから始まった。しかし多くのジョン・カーペンター監督作品で知られる彼女は映画の完成前にこの世を去り、本作品が遺作となった。その他の製作陣には、『パルプ・フィクション』、『エリン・ブロコビッチ』のマイケル・シャンバーグとステイシー・シェア、『ターミネーター3』のモーリッツ・ボーマンが名を連ねている。ジョン&ドナ・マクローリンとウィル&アリソン・ヒメノの原案を脚本化したのは女性新進作家のアンドレア・バーロフ。撮影監督は06年のクリスマス作品『シャーロットのおくりもの』を手がけているシーモス・マクガーベイ。音楽は『Ray/レイ』のクレイグ・アームストロングが、心に響く情感溢れたスコアを提供している。
撮影にあたり、ニューヨークとニュージャージーの港湾局警察は、先例のないサポートをした。
ポート・オーソリティのバス・ターミナルでは初となる撮影を許可され、本物らしさを最優先するという責任を果たす上で、小道具にいたるまで港湾局からの協力を得ることができた。
2001年9月11日に起こった出来事を真の意味で乗り越えることは不可能かもしれない。しかしあの絶望的な状況の中でも「希望」という言葉を信じていた人たちがいたように、この映画が語り継がれていくことによって人間の持つ真の勇気が永遠に記憶されるに違いない。
ワールドトレードセンター

